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第104話 【佐伯視点】答え合わせ

last update publish date: 2026-06-25 06:29:53

「し、新婚旅行? 待って、何の話? 飛躍しすぎじゃない?」

「は? どうせそのうち行くに決まってんだから、飛躍はしてないだろ」

小瀧が盛大に咽せた。咳き込みながら目尻に涙を溜め、非難の色を隠しもしない視線を向けてくる。

なぜそんな反応になるのかが分からない。

行くことが前提の話をしただけだ。予定の確認ですらない。事実の提示だ。

「そ、そういうのってさぁ、ロマンチックなレストランとか予約して、プロポーズして、指輪嵌めてから二人で考える事だから! てか、フランスの人ってめちゃくちゃ熱烈なプロポーズとかするもんなんじゃないの? この前テレビで見たもん、見てるこっちが恥ずかしくなるようなあっちぃ事言ってんの!」

情報量が多い。

しかも論点が散らかっている。さすがFラン。

ロマンチック、レストラン、テレビ、フランス人。

どれも意思決定には不要な要素だ。

「うわ、めんどくせ……俺がそういう事すんの好きじゃねぇって分かるだろ、普通」

感情を盛り上げる儀式に価値を感じないのは、今に始まったことじゃない。

それを「普通」と言っていいかは知らないが、少なくとも小瀧は理解してい
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    「し、新婚旅行? 待って、何の話? 飛躍しすぎじゃない?」「は? どうせそのうち行くに決まってんだから、飛躍はしてないだろ」 小瀧が盛大に咽せた。咳き込みながら目尻に涙を溜め、非難の色を隠しもしない視線を向けてくる。 なぜそんな反応になるのかが分からない。 行くことが前提の話をしただけだ。予定の確認ですらない。事実の提示だ。「そ、そういうのってさぁ、ロマンチックなレストランとか予約して、プロポーズして、指輪嵌めてから二人で考える事だから! てか、フランスの人ってめちゃくちゃ熱烈なプロポーズとかするもんなんじゃないの? この前テレビで見たもん、見てるこっちが恥ずかしくなるようなあっちぃ事言ってんの!」 情報量が多い。 しかも論点が散らかっている。さすがFラン。 ロマンチック、レストラン、テレビ、フランス人。 どれも意思決定には不要な要素だ。「うわ、めんどくせ……俺がそういう事すんの好きじゃねぇって分かるだろ、普通」 感情を盛り上げる儀式に価値を感じないのは、今に始まったことじゃない。 それを「普通」と言っていいかは知らないが、少なくとも小瀧は理解しているはずだと思っていた。「佐伯の好き嫌いなんか聞いてねーし! あー、もう。とにかく、佐伯は順序がおかしいってば」 順序。 その単語が出てきた時点で、また小瀧基準の話かと思った。「いつか妻にしてくれるんですよね?」と聞いてきたのは向こうだ。 だから「パスポートを作れ」と言った。「嫁に貰ってやってもいい」とも言った。 指輪も受け取った。 そして、今も身につけている。 それでも足りないらしい。 レストランという舞台装置と、感情過多な台詞と、外野から仕入れた「フランス人像」が揃って、ようやく正しい順序になるようだ。 理解はできないが、把握はした。 頭の出来は良くないのに、そういう余計な情報だけは記憶に残る。その選別基準の歪さが、少しだけ興味深かった。 こちらは合意と事実で進める。向こうは雰囲気と感情で納得したい。 噛み合わない理由を考えるのは無駄。そう結論づけて、俺は家に帰った。*** 上着をハンガーにかけ、ベッドに腰を下ろした瞬間だった。 小瀧は迷いも躊躇もなく、当然の動作みたいに俺の脚に跨ってくる。 身体が崩れないように腰に手を添えると、小瀧

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